日本とチェコとの社会保障協定について
2009(平成21)年6月1日に「日・チェコ社会保障協定」が発効されました。このことにより、日本とチェコの社会保障制度の二重加入が解消されるのと併せて、年金保険料の掛け捨てが防止されます。
二重加入の防止
日本の事業所に勤務する被保険者がチェコにある支店などに派遣される場合、協定の締結前は、両国の制度への強制加入に関する法令が二重に適用される問題、および、短期間の派遣では就労地国の年金を受給する権利を取得するために必要な期間の要件を満たさないことから保険料が掛け捨てとなる問題が生じていました。
協定の締結後は、いずれか一方の制度のみに加入することになりました。
日本からチェコへ派遣される場合、原則的にはチェコの社会保障制度に加入しますが、チェコへの派遣期間が5年以内と見込まれる場合は、一定の条件をもとに、チェコの社会保障制度への加入が免除され、引き続き日本の社会保障制度に加入することになります。
年金加入期間の通算について
日本の年金を受給するためには、原則として25年以上の年金加入期間を必要とします。
社会保障協定発効後は、チェコの年金制度に加入していた期間をこの年金加入期間として通算することができるようになりました。
基本的な考え方
年金を受けるためには、一定の期間年金制度に加入して年金保険料を納めなければならないという期間要件が日本・チェコ両国ともに定められています。ところが、いずれかの国の年金制度に一時的に加入した場合などは、加入期間が短いために年金を受けられず、納めた年金保険料が掛け捨てになってしまうことがありました。
しかしながら、協定により、日本とチェコの年金加入期間を相互に通算することで、年金受給権を獲得できるようになりました。
年金加入期間の通算とは、両国の年金加入期間をまとめて一方の国から年金を受けるという仕組みではなく、それぞれの国で年金受給権を得るための期間要件を判断する場合に相手国の年金加入期間を通算するという仕組みです。したがって、年金を受けるときには、日本・チェコ両国の年金制度に加入した期間に応じた年金を、それぞれの国から受けることになります。
なお、日本・チェコ両国の年金制度に二重加入していた期間は二重に通算されることはありません。
チェコの年金給付について
老齢年金
チェコの老齢年金については、最低加入期間は25年になります。なお、65歳から受給する場合は15年。
従いまして、チェコの年金を受け取る際には、日本の年金加入期間を通算して、25年以上ある場合(65歳からは15年以上)、年金受給権が発生します。
ただし、チェコの被保険者期間が12ヶ月未満である場合には、通算できません。
尚、チェコと通算規定を含む協定を結んでいる第3国のか加入期間も通算できます。
なお、日本の保険期間をチェコの保険期間に算入する場合には、日本の12ヶ月の保険期間をチェコの365日と同等として、日本の保険期間の1ヶ月間をチェコの30日として換算されます。ただし、1暦年における保険期間の合計は、365日を超えないものとされます。
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チェコ老齢年金の受給開始年齢は男性:62歳、女性:55歳~60歳4ヶ月(男女ともに段階的に引き上げられます。また、女性は子の有無に及び人数によってことなります)です。また、受給権の消滅時効は、原則5年(2008年までに受給権が発生している場合には、原則3年)です。老齢年金は、受給権が発生する4ヵ月前から申請することができます。
協定に基づくチェコ年金額の計算の特例
社会保障協定に基づきチェコの年金額を計算する場合には、次のいずれか高い額を支給することとなります。
- チェコの保険期間のみに基づく計算により算出した額
- 日本の保険期間およびチェコと協定を締結している他国の保険期間をチェコの保険期間とみなして計算を行い、その算定額をチェコの保険期間と比例按分した額
障害・遺族年金
チェコの障害または遺族給付については、一定の条件を満たせば年齢に応じて1~5年の加入期間以上ある方が日本の年金加入期間中に障害または死亡が生じた場合にも、給付を受けることができます。
日本でのチェコの年金の受給
受給手続きは、最寄りの年金事務所で申請します。申請書類はこちらでダウンロードないし年金事務所の窓口で入手可能です。
チェコ年金の受取方法
チェコの年金は、日本国内の受給者に対して、以下のいずれかの方法によりユーロにて支払われます。
- 口座振込(受給者からの生存証明が提出された都度)
- 小切手の郵送(原則、3ヶ月ごと)
※チェコの年金申請書に、支払方法について記入する項目があります。
なお、チェコの法令に基づき、チェコ受給者生存証明書を提出しなければならないこととされています。 - 口座振込を希望した方は、その支給を受ける都度、生存証明書を自ら入手の上、提出する必要があります。生存証明書の様式は、こちらから入手できます。
- 小切手の郵送による支払を希望した方へは、チェコ社会保障局から生存証明書が郵送され、郵送される生存証明書を記入し提出する必要があります。
日本に在住の方については、チェコ社会保障局が定める生存証明書に、在日チェコ大使館による署名または戸籍謄(抄)本または住民票の写しを添付のうえ、チェコ社会保障局へ直接、または社会保険事務所を経由して提出する必要があります。
日本の年金給付に関して
日本の年金加入期間の短いチェコ在住者が日本の老齢年金を請求する方法は次の2つあります。
- 合算対象期間による方法
- 平成21(2009)年6月発効した日本・チェコ社会保障協定による日本・チェコ年金加入期間を通算する方法
尚、日本の年金についての情報は、☞こちらのホームページを参照下さい。
日本の年金(老齢年金)の受給資格
- 老齢基礎年金
原則として、25年以上の加入期間が必要です。
特例等については、☞こちらを参照下さい。 - 老齢厚生年金
- 65歳未満
①60歳以上である。
②厚生年金の被保険者期間が1年以上ある。
③老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている。 - 65歳以上
①65歳に達している。
②厚生年金の被保険者期間が1ヶ月以上ある。
③老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている。
詳細は、☞こちらを参照下さい。
- 65歳未満
合算対象期間による場合(従前からの方法)
合算対象期間とは「カラ期間」とも呼ばれ、チェコに居住していることによって、国民年金に加入できなかった期間のことをいいます。
国民年金は、日本国内居住者で、20歳以上60歳未満の方が強制加入ですが、チェコ居住者は加入義務(任意加入)がありません。
日本の年金の受給資格期間は25年(国民年金、厚生年金、共済年金の合計)以上の加入期間が必要ですが、チェコに居住する方にはこの加入義務のない渡蘭以降60歳までの期間を受給資格期間に合算(合算対象期間)できます。
但し、この期間は受給資格期間として計算されますが、年金額の計算には反映されません。
- 年金加入期間:日本の年金に未加入で、チェコ在住の60歳までの期間
- 年金額:日本の年金に加入した期間
- 配偶者加給年金額:原則、厚生年金20年以上の加入(期間短縮特例有り)
- 時効:5年。受給資格があれば、5年前まで遡及請求できます。
- 手続:日本の年金事務所
日本・チェコの年金加入期間通算する場合
日本・チェコ社会保障協定の発効前は、25年以上の受給資格期間がないと日本の年金は受給できませんでしたが、協定発効後は、両国の年金制度への二重加入を防止し、両国での年金加入期間を通算して年金受給資格期間を満たすことができるようになりました。
同時に、一定の条件を満たせば、配偶者加給年金、障害年金、遺族年金も受けることができる可能性があります。
※合算対象期間の場合、60歳までのチェコ在住期間を加算。
※日本・チェコ社会保障協定の場合は、チェコの年金に加入した期間を通算。
- 年金加入期間:日本の年金に未加入で、チェコ社会保障年金に加入した期間(60歳の年齢制限はない)
- 年金額:日本の年金に加入した期間
- 配偶者加給年金額:厚生年金加入期間が20年未満でも、加入期間に比例して加算されます。(期間短縮特例有り)
- 時効:5年。但し、協定発効の平成21(2009)年以前に遡及することができません。
- 手続:日本・チェコの年金事務所
裁定請求(受給手続)
- 裁定請求の窓口
日本の年金事務所。
尚、日本・チェコ社会保障協定による場合は、チェコの社会保障事務所でもできますが、加入記録の調査・確認が必要な場合は、日本の年金事務所の方が良いと思いわれます。 - 裁定請求に先立ち、被保険者記録照会を行い、受給資格の有無の確認を受け、回答票を入手することがその後の裁定請求のために必要です(代理人でもこの記録照会は可能です)。
その為に、次のことを事前に準備、整理しておくことをお薦め致します。- 年金手帳・厚生年金保険被保険者証の確認
- 勤務記録(厚生年金の場合)・住所(国民年金の場合)の整理
(年金記録の調査・確認のため必要です。)
「私の履歴表」という便利なツールが☞こちらに紹介されていますので、ダウンロードの上、活用されることをお薦め致します。
- 主な必要書類
- 老齢給付裁定請求書
- 年金手帳・厚生年金被保険者証
- 戸籍謄本・抄本
- 在留証明書(在蘭日本領事館発行)
- 居住者証明書
- 年金を受ける者に関する届出(住所、チェコまたは日本の振込銀行口座)
- チェコ年金等の期間等の申立書(日蘭の加入期間通算の場合)
- 合算対象期間を証明する書類(戸籍の附票、パスポートの出入国記録、法務省の出入国記録など)
- 所得証明書(本人・配偶者)
- 裁定請求の時期
- 60歳:厚生年金(共済年金)に1年以上加入していた方
(男性:昭和28年4月2日、女性:昭和33年4月2日以後生まれの方は段階的に裁定請求年齢が引き上がります) - 65歳:国民年金だけの方、厚生年金(共済年金)の加入期間が1年未満の方
- 60歳:厚生年金(共済年金)に1年以上加入していた方
障害・遺族年金
日本の年金の受給要件である「初診日または死亡日に日本の年金制度に加入していなければならないこと」を判断する際、初診日または死亡日にチェコの年金制度に加入中であっても、日本の年金制度に加入しているものとみなすことができます。
また、被保険者期間のうち、保険料が未納ではない期間が3分の2以上でなければならない要件を判断する際に、チェコの年金加入期間を通算することができます。
チェコの年金請求者のための申請書
日本の年金請求者のための申請書
協定の目的が二重加入の防止となっていますが、任意で二重加入することは可能ですか?
協定の規定では、派遣期間に応じてどちらか一方の制度に加入することとなっており、任意に選択する仕組みではありません。
適用証明書は、どこに提示することになりますか?
チェコ当局による監査等が行われた際に、提示できるように準備していただければ結構です。
チェコの年金申請時に必要な情報はどのようなものになりますか?
少なくとも、チェコ当局に登録された名前(女性の方は旧姓も含みます)、生年月日が判ればチェコ側がいろいろ調べてくれるようですが、職歴、最終居住地も記録されていたほうが望ましいと思われます。
日本の年金手帳等持っていないため、基礎年金番号が分かりませんが、年金申請時に必要な情報はどのようなものになりますか?
氏名、生年月日、職歴が最低限分かれば、それを元にその方の基礎年金番号を捜します。
例えば配偶者がチェコで就労しているような場合は、どのように扱われますか?
配偶者がチェコで所得を得てチェコの社会保障制度に加入する義務が生じているのであれば、協定による免除の対象でなくなることから、チェコの制度に加入することになります。
現地採用の職員はどのような取り扱いになりますか?
日本の本社との間で雇用関係があるかどうかで判断されます。日本の本社との雇用関係がなければ、協定の一時派遣の対象とはなりませんので、チェコの制度に加入することになります。
すでにチェコで勤務している駐在員の派遣期間の起算日というのはいつになりますか?
協定が発効する平成21年6月1日になります。その時点でチェコに駐在されている方で発効日から5年を超えない見込みの派遣であれば、これまでの就労期間に拘わらず一時派遣者として申請することが可能です。
当初予定していた5年間の派遣期間が延びてしまった場合、どのような手続きが必要でしょうか?
延長が見込まれる時点で再申請していただき、チェコ側との協議を踏まえて、特例措置の延長となるか、原則規定が適用されるか決定されます。
厚生年金に任意加入することは可能ですか?
厚生年金に任意加入制度はありません。但し、国民年金であれば、任意加入制度があります。
年金通算期間に加算する期間について、チェコ人と結婚してチェコで就労していない場合には、チェコでの年金加入期間は通算することができますか?
日本の年金加入期間に加算できるのは、チェコにて保険料を支払った期間のみなので、チェコで就労せず居住のみによって得られる期間は通算することができません。ただし、日本国籍を有している人が、海外居住している場合には、いわゆるカラ期間(合算対象期間)に該当するので、日本の国籍を離脱していない限りは、海外居住を証明できる期間を加算することが可能となっています。
※注1:カラ期間とは、保険料を納付していないため年金額を計算する場合には算入されない期間であるが、受給資格期間には算入することができる期間のこと。カラ期間にはいくつかありますが、今回の場合は、日本国民で海外に居住していた昭和36年4月以降の20歳以上60歳未満の期間となります。
※注2:海外に居住していた期間は、戸籍の附票の写し、大使館が発給する在留証明、居住地の公的機関が発行する居住証明書等により証明されることになります。
※注3:大使館が発給する在留証明は、申請者の外国における在留の事実(住所及び在留期間)ですが、日本に帰国後申請することはできませんので、帰国前に取得する必要があります。
在留証明につきましては、大使館日本語版HP(>領事情報>領事サービス>各種証明>在留証明)をご覧頂くか、大使館領事班にお問い合わせ下さい。
日本国籍でない人を日本の本社で採用してチェコに派遣している場合の取り扱いについてどうなりますか?
厚生年金制度は、国籍を問わないため、日本人と同じ取り扱いになります。
一時派遣者であった者が、一旦帰国して再度チェコに派遣されるような場合、再度一時派遣者として認定を受けることができますか?
最初の一時派遣期間が終了してから1年間が過ぎなければ、一時派遣者として認定することはできません。1年以内に再度派遣されるような場合には、一旦チェコの制度に加入し、派遣終了日から1年を過ぎてから、再度一時派遣者としての適用申請を行うことに
なります。同一人物のチェコへの派遣ができなくなる、というものではありません。
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