あこがれの米国本社へのチャンス
私は現在、米国のマイクロソフト本社で Microsoft Outlook の開発に携わっています。最初は日本のマイクロソフトに就職し、次に米国本社へとキャリアを進めました。日本のマイクロソフトでは Microsoft Office の開発に携わっており、在籍期間は約 7 年。日本のマイクロソフトで働いているうちから米国本社で働きたいと考えるようになり、そのためのチャンスをうかがっていました。米国本社で開発をしたいと考えても、すぐに行動に移せなかったのは、米国本社での開発の様子の具体的な像がつかめず、不安を感じていたためです。
そんな折、チャンスが巡ってきました。米国本社の Microsoft Outlook チームとは以前から連絡を取り合って仕事をしていたのですが、彼らが 5 週間、日本に滞在して一緒に仕事をすることになったのです。一緒にコードを書きながら、それまでためていた疑問をぶつけて不安を解消しました。彼らが米国に帰る前に、自分も米国に渡って一緒に働こうと心は決まっていました。
情報の収集と面接
決断さえすれば、後は案外スムーズに事が進みました。マイクロソフトでは、異動のための面接前に、異動希望先の採用担当者と直接、話をすることができます。しかも、そうしたことをするのに、自分の上司の許可が必要ありません。具体的にどのような仕事をするポジションなのか、どのような人を必要としているかといったことを、面接する前に聞けるのです。私は出張の際、異動希望先の部署の採用担当者と面会し、さまざまなことを聞き出し、双方で合意 してから面接に臨むことになりました。
そこには、将来の仕事でしょうか？
その当時、私は既に約 2 年以上、同じチームに所属していました。異動の希望を上司に伝え、それが人事担当者に伝わると、希望先で面接の準備が進められます。同時にこちらでも、卒業証書やパスポートのコピーなど、必要な書類をそろえて面接の準備をします。
数日で面接のリクエストが届きました。米国出張に合わせ、出張中に面接が受けられるようにスケジュールを調整しました。面接を終えると数日で結果が手元に届きました。ただし、これは異例の早さだったようで、通常は約 1 週間程度掛かるようです。
素早いリロケーションの準備
転居して働けるようになるまでに必要なものはほとんどマイクロソフトが用意してくれました。異動する人に対してはリロケーションの担当者が付き、必要な書類に記入するだけで、現地での生活にまつわるさまざまなことを処理してくれます。テンポラリー ハウスの用意、車や携帯電話などの購入、銀行口座の開設、クレジット カードの取得、SSN (社会保障番号) の取得など、引っ越すまでに現地でしなくてはならないほぼすべてが含まれています。さらには、場所と予算を相談し、テンポラリーではない家を購入したり、借りたり、といったところまでサポートしてもらえます。
この異動のためのサービスには、さらに英語のトレーニングが 40 時間、現地での運転のためのドライブ練習が 10 時間、日本に 1 度帰るための旅費、必要に応じてグリーン カード取得の申請など、さまざまなものが含まれています。しかも、これらを非常に素早く準備してくれます。実際、私の異動が決まったのは 12 月ですが、2 月には席に着いて仕事をしていました。
マイクロソフトの研究開発部門のエンジニアならだれでも米国で働くチャンスがある
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米国本社の研究開発部門で働くために、特別な才能や知識は特に必要ないと思っています。現在、マイクロソフト ジャパンの研究開発部門で働いていて、エンジニアとして最低限の能力とモラル、一般常識があれば、だれでも米国本社で働くチャンスはあります。実際、マイクロソフト ジャパンの研究開発部門のエンジニアと、米国の研究開発部門のエンジニアの技術レベルに差があるとは、はっきりと申し上げられません。マイクロソフト ジャパンの研究開発部門のエンジニアが、米国にやってきても、十分活躍できるでしょう。これは、デベロッパーだけに限った話ではなく、プログラム マネージャーやテスターも同様です。もちろん最低限の英語力は必要ですが、実は私も英語はあまり得意ではありません。テスターやプログラム マネージャーであれば、ある程度高い英語力が必要かもしれませんが、デベロッパーならば TOEIC 700 点程度で十分やっていけるでしょう。
開発のスタイルも、日本のマイクロソフトと変わりありません。デベロッパーとテスター、プログラム マネージャーでチームを作り、特定の機能や製品を開発します。私が現在所属しているのも、デベロッパーが 1、2 人、テスターも 1、2 人、プログラム マネージャーが 1 人の小さいチームです。この規模で、カレンダーやメールなどの機能を開発しています。
普段オフィスにいる時間は、日本とさほど変わりません。9 時から 10 時ごろにオフィスに来て、午後 5 時から 6 時ごろに帰っています。午後 3 時ごろには家に帰り、自宅で仕事をすることもあります。その辺りはかなりフレキシブルですね。
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日米での違いといえば、1 人 1 部屋与えられるので、会議室を使わなくなったというのも、1 つです。3、4 人程度での話し合いなら、自分の部屋に呼んで気軽にミーティングが開けます。
米国本社には非常に頭の良い人が多いというのは事実です。いろいろな意味で勉強になります。ただそれは、頭の良い人だけが集まっているというよりも、プログラマ全体の数が多いので、頭の良い人も多いというだけです。優れていなければここで働けないということではありません。
また、規模の大きなものをこなす大きなチームがあるのは米国本社ならでは。大きい組織で、大きいものをどのように作るか、それを見るには、ここ以外にないでしょう。Microsoft Outlook も 10 年以上の歴史があり、膨大なユーザーがいます。そこからのフィードバックも膨大になります。これを大人数の開発者で対応する……。こうしたことが間近で見られるのは、とてもエキサイティングです。
将来のキャリアへ向けて
現在の目標は、チームが困難にぶつかったときに先人たちがどのような方策で解決したかを知ること、現在周りにいるすばらしいエンジニアが、どのようなチャレンジをしているのか知ること、これらを自分たちに当てはめ、成長し、より良いものを作れるようになることです。米国本社は、そのために最適な環境だといえるでしょう。
マイクロソフトの社内にいれば、全世界のオープン ポジションを調べられます。このため、国境を越えて異動することは思ったほど大変ではありません。日本から米国本社、もしくは中国といった異動が、国内と同様に可能になります。要は国を越えて引っ越す元気と勇気があるかどうかだけです。
このようにマイクロソフト社内にいれば比較的簡単に国境を越えて就職できますが、日本の外部の会社に所属している人が直接米国本社に応募しても、採用されるのは難しいでしょう。日本の大学や、前職でやっていたことを米国本社で評価するのが大変だからです。
海外で働くようになって感じているのは、どこの国で何をやるか、自由に選べるようになったということです。日本以外で働いてみて視野が広がり、米国だけでなく、ほかの国で働くことにも抵抗がなくなりました。
次のキャリアを重ねる対象として、さまざまな国を平等に考えられるようになったことは、米国で働くようになって得た大きな収穫といえます。
マイクロソフト社内には、私のようにさまざまな� ��にまたがってキャリア開発をする人も多くいますし、種類の違うポジションを経験してキャリア開発する人も多くいます。キャリア開発といったことを考えた場合、さまざまな可能性が社内にもあるというのが、マイクロソフトの魅力になっていると思います。
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